日米教育比較ー日本で満点、アメリカで零点 暗記解答(Plagiarism)の捉え方

アメリカ、ニューヨーク州にあるボーディングスクールで寮生活をしている高校3年の留学生の親から驚きの相談を受けました。学期末の生物学の試験で本人の答案にFがつけられてしまったというのです。Fとは、日本式の5段階評価でいえば1にあたります。本人は完璧といえる記述解答をしたそうですが、それがFだというのです。

 

学校にFの根拠を請求したところ、本人の解答は、plagiarism(プレイジャリズム)に該当するというのです。plagiarismとは、盗作、盗用などと訳されますが、要するに本人の解答は教科書に書いてあることを丸写ししたものであるから、Fであるということでした。もちろん、本人は日本式に言うところのカンニングはしてはいません。ただ、ひたすらに、出題範囲の学習内容から重要と思われることを覚えこみ、それを試験で文字にしただけです。

 

日本であれば、パーフェクトな答案であり、完璧に覚えたことが最高の評価を受けるべきと思われますが、アメリカでは高校の段階から「暗記」ではなく自分の意見を踏まえた解答が求められることは、大きな衝撃ではないでしょうか。

 

アメリカのボーディングスクールでは、文科系クラスでは特にディスカッションに多くの時間を割きます。クラス人数が15名以下なので、ディスカッションはクラス全員参加が原則です。特に「歴史」のクラスにおいては、例えば、関ヶ原の戦いで東軍が負けたらその後の社会はどうなっていたかなどという問題提起を先生が生徒にします。大切なのは、歴史は「暗記」することではなく、生徒に考える習慣を身につけさせる、ボーディングスクールではそれを基礎教育の根本に置きます。

 

「ディスカッションばかりしていて、知識を増やすことはどうなっているの?」という疑問がわきます。解答は、「知識を増やすことは生徒の自助努力、考える力を養うことで、学ぶ楽しさを知り、それが知識を自ら増やすことに繋がる」と彼らは考えているようです。

 

生徒自らが考える教育、それを実践しているのがボーディングスクールの創立以来の伝統であり、現代にも継続されている大きな特徴といえると思います。