日本のAO入試について

高校在学時の1年間留学に対して30単位(1年間の学習内容に相当)が認められるようになり、現在では、公立高校ではほぼ100%、私立高校でも、かなりの学校が、休学や留年をしなくても、留学年を含めて、3年間で高校を卒業できるようになっています。

 

この制度が導入され、運用され始めたのが90年代です。この頃から、海外で高校を卒業した生徒の入試に対する大学の考え方が次第にオープンになってゆきます。

 

日本の大学入試における偏差値は、かなり強力なようです。欧米のみならず世界のボーディングスクールには、偏差値という入学難易度を示すものさしはありません。大学の評判が偏差値によって判定されるというのが、「現実」ということをある予備校の大学入試の専門家の方から聞きました。センター試験のデータを分析して、学校ランキングが出るのだそうです。その結果があまねく入試関連情報機関に公表されるため、全国の受験生は、そのいわばランキングをもとにして、自分の志願先を決定してゆくということのようです。

 

AO入試というのは、アドミッションのAとオフィスのOを組み合わせた、造語ですが、それぞれの学校が独自で合否を判断するというのが主旨です。受験者はセンター試験を受けないので、学校の公示ランキングには関係ないというところが、この入試システムの画期的なところであるかもしれません。

 

それゆえに、奇抜な学生選択ができるのか、あるいは、メジャーな学校の動向に無関係だから、やっぱり救済的措置なのか、それを決定するのは受け入れる学校の判断にかかっているわけです。

 

AO入試の内容はそれを実施する大学によって重点の置き方が異なるようですが、高校時代の成績の提出、個別の面接、小論文などはほぼ共通してAO入試に見られる要素です。小論文などはあらかじめテーマが決まっており、試験当日に提出することに

なっている場合が多いので、「本人が書いたかどうか」は最終的には、一人ひとりの良心の問題です。

 

本家のアメリカなどは、AOの歴史が長いだけに、成績、本人の特質を示すような書類などを統合してみると、その作文は人が書いたかどうか、すぐにわかると言います。それが、アドミッションで働く人々のセンスにもなっているのでしょう。

 

一般受験のように会場試験がないことが最大の特徴である、このAO入試は、個々の受験者の特性を見るという点では、アメリカの入試方式と同じです。アメリカではセンター試験の代わりにSATを使いますが、日本のAO入試の場合、それをTOEFLなどに変えれば、英語の知識程度はおおよそ把握することができます。

 

一般受験者数から比べるととてもマイナーなこのAO入試制度です。しかし、海外で高校を卒業した人々の「救済策」という意識でなく、海外の学校との併願により、日本の受験システムを変えて行く試験制度にまで成長するかどうか。

 

それを決めるのは、AO入試受験生一人ひとりの意識にあると思います。意識の高い留学生が日本の大学に戻ってきたいと考えた場合、このAO入試という考え方は彼らにとても有利に働くと思います。

 

それを活用できるかどうか、ゆっくりではありますが、留学生の日本の大学受験という視点からの立場は、彼らを尊重するものになりつつあると私は感じています。